"敗者"を売り、"勝者"を保有するのが正解とは限らない?
初めて「ピーター・リンチの株で勝つ」を読んだときはバリュー投資に対する偏見や流し読みにより身になっていませんでしたが、改めて読み直すと一言一言が身に染みます。
ある人々は、自動的に"勝者ーー株価が上がっているものーー"を売り、"敗者ーー株価が下がっているものーー"を保有し続けている。
これは、咲いている花をむしりとり、雑草に水をやるのと同じことである。
花のくだりはエナフンさんが好きなフレーズです。
しかし、このフレーズには続きがあります。
またある人々は、自動的に"敗者"を売り、"勝者"を保有しているが、これもあまりうまくいくとは思えない。
どちらの戦略も、現実の株価の動きと会社のファンダメンタルズの価値を結びつけているからである。
一見すると「じゃぁどうすればイイんだよ?」って感じです。
「自動的に」は問題ですが"敗者"を売り、"勝者"を保有するのが正解とは限らないと明言されると身が引き締まります。
よりよい戦略とは、ストーリーとの関連で株価がどう動いていくかによって、株の組み入れを増やしたり減らしたりして循環させるとこだと、私は思う。
株価が上がり過ぎていれば売り、また割安になれば買い戻す。
株価が下がっていてもファンダメンタルズが良ければ買う。
と言っています。
有名な個人投資家などがしている保有比率を調整する行為はまさにこれであり、ピーター・リンチが推奨している戦略です。
読み返すと新たな発見があるので今後も定期的に「ピーター・リンチの株で勝つ」などの良書は読み返して理解を深めたいと思います。
- 作者: ピーターリンチ,ジョンロスチャイルド,Peter Lynch,John Rothchild,三原淳雄,土屋安衛
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
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純金融資産保有額の階層別にツリーマップをつくってみた
野村総合研究所が2016年に発表した保有資産階層別のピラミッド図があります。
この図はとても分かりやすく、よくできているのですが上位層と下位層の差をパッと見で正確にイメージするには適していません。
そこで、保有資産階層別の保有資産規模と世帯数のツリーマップをそれぞれ作ってみました。
保有資産規模はそこまで違和感がないですが、世帯数はすごく違和感があります。
上位層の世帯数は極端に少ないです。
超富裕層に至っては世帯数が少なすぎて文字の潰れ加減が半端ない。
数値から予想はできていましたが改めてツリーマップにするとその差は圧巻です。
ちなみにバブルチャートにするとこんな感じです。
マス層以外の世帯数の少なさと上位層ほど平均保有資産が多いことが一目瞭然です。
私が憧れ、目指している億り人の階層である富裕層がいかに狭き門かが伺えます。
目標は高いほうがよいですが、改めて高い目標であることを思い知らされます。
現在私はマス層です。今後はアッパーマス層、準富裕層、富裕層と着実に上の層へのステップアップしていきたいです。
- 作者: 加谷珪一
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制限率幅(制限値幅のレシオ換算)
株価が1日のうちに極端に変動しないよう制限値幅という制度があります。
ストップ高、ストップ安になる値幅ですね。
株価は通常、額(値)ではなく率で変動します。
1,000円の銘柄が1日に50円値上がりすると結構上がったと感じるのに対して、10倍の10,000円の銘柄が1日に50円値上がりしても大した値上がりには感じないでしょう。
株価は率で変動するにも関わらず制限値幅をまとめた表には率が記載されていないため作ってみました。
ボリュームゾーンである10,000円以下の制限値幅、制限率幅の表を下に示します。
基準値段 | 制限値幅 | 制限率幅 |
---|---|---|
100円未満 | 上下 30円 | 30.3% 〜- |
200円未満 | 50円 | 25.1% 〜50.0% |
500円未満 | 80円 | 16.0% 〜40.0% |
700 円未満 | 100円 | 14.3% 〜20.0% |
1,000円未満 | 150円 | 15.0% 〜21.4% |
1,500円未満 | 300円 | 20.0% 〜30.0% |
2,000円未満 | 400円 | 20.0% 〜26.7% |
3,000円未満 | 500円 | 16.7% 〜25.0% |
5,000円未満 | 700円 | 14.0% 〜23.3% |
7,000 円未満 | 1,000円 | 14.3% 〜20.0% |
10,000円未満 | 1,500円 | 15.0% 〜21.4% |
※ TOPIX 100構成銘柄は若干異なります。
500円以上700円未満の制限率幅は14.3%〜20.0%と低い水準です。
ストップ高を狙うなら500円以上700円未満の銘柄がよいかもしれませんね。
「稲妻が輝く瞬間」に居合わせなければならない…のか?
投資家は、「稲妻が輝く瞬間」に居合わせなければならない
「敗者のゲーム」の有名な一節です。
この一節は1980~2008年の間のS&P 500の年収益率が11.1%に対してベストの上昇日10日を逃すだけで年収益率が8.6%に低下することなどに由来します。
今回はこの現象について検証します。
検証条件
年数はPCのスペックの関係で10年に減らしています。
1年間の営業日数は東京条件取引所のおおよその営業日数の245日を採用しています。
検証データは楽をするために正規分布の乱数から作成しています。
年平均の正規分布の平均は上記のS&P 500の年収益率に近づけるために0.1にしています。0.11にすべきでしたがご愛嬌。
年平均の正規分布の標準偏差は適当です。グラフが株価のようになる程度の数値にしました。
前提条件
株価は正規分布に従うことを前提に話を進めます。
実際の株価は正規分布より暴騰、暴落の回数が多いとどこかで見た気がしますが大変なので正規分布に従うこととします。
検証情報
これから示す検証結果は複数回の平均ではなく、1回の検証結果です。
数回検証して傾向は変わらないことを確認しています。
示す検証結果は検証データ(基準)の年収益率が「敗者のゲーム」のS&P 500に近い際の結果です。
検証結果
年収益率は以下になりました。
- 基準: 11.0%
- ベスト10日を逃した場合: 8.5%
偶然ですが「敗者のゲーム」とほぼ同じ結果になりました。
たしかにベストの上昇日10日を逃すとパフォーマンスは無視出来ないほど低下します。
ではベストの上昇日10日に加え、ワースト下落日10日を逃した際のパフォーマンスはどうなるでしょうか?
結果は以下のように基準のバイ&ホールド時のパフォーマンスを若干上回ります。
- 基準: 11.0%
- ベスト10日を逃した場合: 8.5%
- ベストとワースト10日を逃した場合: 11.6%
実際の株価は暴騰より暴落の値幅のほうが大きい傾向にあるためパフォーマンスはもっと向上するはずです。
考察
「敗者のゲーム」では
タイミングに賭ける取引がうまくいかないことは、過去に何度も立証されてきた。
とも書かれています。
- 作者: チャールズ・エリス,鹿毛雄二
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それは間違いだ、市場の動向によりCPを調整するのが正しいんだ!!
とは簡単には言えません。
なぜならワースト10日だけ逃がれることができないからです。
暴落に備えてCPを高くしたものの株価は上昇を続けるなんてことは日常茶飯事ではないでしょうか。
運用の歴史を見ると、市場が大底から回復する最初の一週間に、株式リターンのかなりの部分が獲得できることは明らかである。
この一文が追い打ちをかけます。
仮にタイミングを計ってワースト10日を逃れることができても、ベスト10日も逃す可能性が高いのです。
今回の検証結果は奇跡的にワースト10日とベスト10日を逃れてもバイ&ホールド時より劇的なパフォーマンスを得ることはできないことを示しています。
ワースト10日とベスト10日を逃れる神業をやってのけるより、バイ&ホールドするほうが現実的です。
結論
投資家は、「稲妻が輝く瞬間」に居合わせたほうが賢明である
注意
今回の検証結果は計算ミスや乱数の傾向などによる可能性があります。 検証データが正規分布だから当たり前のような気もします。 検証結果が正しいことを保証するものではありません。
エナフンさんの名言(2)
すっかりエナフンさんフリーク(信者(笑))の私がエナフンさんの梨の木を読んで感銘を受けた名言を紹介します。
第2回目の今回はすでに何回か紹介している名言です。
グロース投資家もバリューを気にするし、バリュー投資家もグロースを気にしないわけではない。
ではグロース投資家とバリュー投資家の違いは何?と疑問の人への一言。
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結局のところ、成長と割安さのどちらをより優先するかで、
グロース投資とバリュー投資が分類される、云々
というのが、洗練された説明と言えるでしょう。
エナフンさんの梨の木 バリュー投資4パターン
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どちらをより優先するかでグロース投資家とバリュー投資家が分類されるんですね。
最初この名言を読んだ時はピンと来ていませんでしたが、たしかに洗練された説明です。
収益バリュー投資家も含め、いくら成長していて優秀な企業でも割安でなければ購入しないのがバリュー投資家なんですね。